狭鼻猿における定量的尾長推定


背景① 狭鼻猿には、大きな尾長変異がある。

狭鼻猿は、旧世界 (アフロ・ユーラシア大陸) に生息するサルです。

狭鼻猿の中には、胴長の倍以上にも及ぶ長い尾を持つ種もいれば、尾を全く持たない種までおり、尾長に非常に大きな種間変異が見られ、このような尾長変異は、生活環境への適応や系統を示す重要な指標の一つであると考えられています。

中でも、我々ヒトと類人猿 (併せてヒト上科) には、尾が全くありません。我々はなぜ、また、どのようにして尾をなくしたのか、現在もなお解明されていません。ヒト上科における尾長短縮過程を復元するには、化石などの部分的な骨格資料から尾長を復元し、尾長の短縮過程をまず復元する必要があります。


背景② 先行研究は、カテゴリカルな尾長推定で、あまり有用でない。

しかしこれまでの研究には、尾長をある一定のカテゴリー (長い、短い、とても短い、ない) にしか推定できず、さらには、「短い」とされるカテゴリーが広すぎるという問題点がありました。この範囲は尾長短縮過程の復元には特に重要なので、これではほとんど使い物になりません。


本研究で明らかになったこと:

尾の「短い」狭鼻猿の尾長は定量的に推定できる。

系統的な影響を考慮する必要がなく、さらに尾長が大きく変異するという大変貴重な資料を用いて、定量的な尾長推定式を作り、それを他の狭鼻猿種に当てはめてみました。その結果、これまで尾が「短い」と一括りにされていた狭鼻猿種の尾長は定量的に推定できることが明らかになりました。

 

この研究結果は、狭鼻猿、ひいては我々ヒト上科における尾長短縮過程を復元するための大きな一歩だと思っています。


さらに詳しく知りたい方は…

 

論文の別刷りをお送りします。お気軽にご連絡下さい。

 

Tojima (2013) Tail length estimation from sacro-caudal skeletal morphology. Anthropological Science 121 (1): 13-24.



* サイト内の文章や画像の無断転用、引用は禁止しています。

ご希望の際には、ご連絡ください。