背景
研究内容の一つ目でも述べたことですが、霊長類の尾長には非常に大きなバリエーションがあり、それは適応と系統とを示す重要な指標の一つだと考えられています。その尾長を構成する重要な要素のひとつに、尾椎の数が挙げられます。過去の研究により、尾長が異なると尾椎の総数が違うことは証明されてきました。
尾椎、と一言で言っても全部が全部同じ形をしている訳ではありません。尾椎はその形から、大きく2種類に分けることができます。すなわち、近位尾椎と遠位尾椎です。これらの尾椎により構成される尾の近位・遠位領域では、可動性や機能が異なっていると考えられます。ですから、これらそれぞれの領域における尾椎数が、尾長の様々な霊長類においてどのように変異しているのか、を知ることは霊長類における尾長の進化を解明するのに役立つと考えられます。が、こうした問題に着手した研究は今までありませんでした。
明らかになったこと
そこでこの研究ではまず、近位尾椎の数に着目し、それが尾長の様々な旧世界ザルにおいてどのように変異するかを調べました。近位尾椎にのみ着目したのは、これらが比較的残存しやすい部位であるためです。遠位尾椎は、近位尾椎に比べて数が多く、形態も突起などがなく非常にシンプルな上、とても小さいため、博物館に所蔵されているような資料であっても、完全に残っているケースは残念ながらほとんどありません。
様々な旧世界ザル類において、この近位尾椎の数を調べてみたところ、この尾椎の数には系統的なグループ間で差がみられること、特にヒヒ属というグループ内では非常に大きな変異が見られ、尾が短い種ほど近位尾椎の数が少ない傾向のあること、が示されました。
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Tojima (2014) Variation of the number of proximal caudal vertebrae with tail reduction in Old World monkeys. Primates 55 (4): 509-514.
© Sayaka Tojima 2015