学会や講演で、「わたしたちヒトにはしっぽはありません」と私はよく話始めるのですが
そうすると発表終了後に必ず、私の周りにちらほらと集まってきて色々教えてくれる人達がいます。
「実は、私の同僚ではしっぽが生えている人がいてね…。」
「親父には、しっぽみたいのが生えてたんですよ。」
などなど、誰に生えているのかはさておき、大抵は「しっぽの生えたヒト」に関するご報告です。そういう話、大好物なのでいつも楽しく聞かせてもらいます。
たしかに、漫画にも昔話にもしっぽの生えたヒトの話はたくさん出てきます。
でも、そういうしっぽ、本当にしっぽなの?疑問に思って研究しました。
Human tailという先天異常がある
名前そのまま。日本語では「人尾」と呼ばれたりもする先天異常があります。
子供が生まれてみたら、おしりにしっぽのようなものが生えている!というような
報告例が多いです。致死的な異常ではないため、臨床的には重要視されてきませんでした。
中でもその原因については、発生段階でしっぽが上手く短くならないからだろう、と
1900年代初頭に言われたきり、きちんと検証もされず放置されていました。
胚子期のしっぽの先端には体節のない領域があって、そこが残っちゃったんでしょ。
という仮説なのですが、しかしこれ、本当?いや本当じゃなかろう。と私は思いました。
だって、たくさんヒト胚のしっぽを見てきたけれど、先端までびっしりと体節が入っていて
無体節領域なんてなかったから。
でも、それが異常の原因ではないのなら、他に何か納得のいく理由があるはず。
そう思い、この症例が報告された1800年代後半から現代に至るまで、過去の症例を
できるだけ引っ張り出して読み解いてみることにしました。
その結果、見た目は似ていても原因には4タイプありそうなこと、
それぞれが簡単に初診でも見分けられそうなこと、がわかってきました。
Human tailは確かにそれ自体が致死的な異常ではないけれど、見た目が悪いからと単純に
切除してしまうと、術後数年経ってから排泄異常や運動に支障をきたす可能性もあり
患者さんのQOLに影響しかねない厄介なもの。
今日では術前検査をしっかりやることは当然ですが、症例を初めて目の当たりにした
お医者さんであっても、それがどのようなリスクをはらんでいるのか想定できれば
より適切な処置に繋がりやすいかもしれません。
詳しくはこちらの論文をどうぞ